売上アップ
2024/10/08
圧倒的な「断ち」の技術力が生み出すオンデマンド商材が売上を牽引
株式会社 田中紙工
株式会社 田中紙工様は、国内外の平断裁機13台と高い断裁技術をもった専門の職人集団を有する、創業以来「断ち」にこだわってきた印刷加工会社です。
高精度の断裁技術が生み出すオンデマンド商材。
それは、カードです。サイズが小さく、輪郭精度の要求も厳しいカードは、コンマ数ミリといった精度が要求されます。日本一の断ち屋を目指し、同じく断ちの精度が要求されるビールのラベルなども手掛けてきた田中紙工様だからこそ取組めた商材といえます。
オリジナルトランプ、カルタ、トレーディングカード、スピリチュアルカード、教材・研修向けのカードなど、田中紙工様におけるカードの売上は、売上構成比でみると約3分の2。しかも、コロナ禍でも巣ごもり需要があり8月、9月からV字回復。その後も、オンデマンド印刷を活用した小ロットのオリジナルカードのビジネスは大きな伸びを見せています。
課題に感じていたこと
以前の田中紙工様の売上は、大手印刷会社からの委託業務が3分の1、協力会社からの依頼案件が3分の1、学参図書系が3分の1という構成でした。その当時の一番の課題は、既に加工代が決まっており、値決めができないこと。仕事は受注するものの、価格決定権がないため、自社から見積りが出せない状況だったそうです。田中社長は利益確保のために、従来の後加工のみの請負型ではなく、上流の印刷も含めた仕事を取りに行くビジネス転換が必要だと考えていました。
そんな時、受注したカードの断裁業務。クライアントからの評価も高く、これは自社の強みである断裁技術を生かしたビジネスになるのではと考えたそうです。
カード加工前と加工後
改善方法
その後、カードニーズの把握や需要喚起のために展示会やギフトショーに出展。その時ビジネスベースで考えていたカードのロット数は500部。しかし、いざブースに立ってみると、1部、10部、多くても100部といった小ロットのニーズが高いということがわかりました。
そうしたニーズに応えるため、2012年にPOD機を導入。オリジナルトランプ、カードゲーム等のオンデマンド商材を小ロットから制作してネットで販売する仕組みを作り、本格的なカードビジネスはスタートしました。BtoBだけでなくBtoC向けもターゲットに後加工だけではなく、小ロットの印刷も含めた受注を始めたのです。
実際にECサイトを稼働させてみると、ギフト目的の1部単位でのオーダーが6割と最も多く、オリジナルトランプの需要はピークが2~3月で、卒業記念用のものが多いとか。卒業・卒園記念のトランプは口コミで広がりを見せ、平均すると月に1000部程度のカード受注があるそうです。
当初は、画像をアップロードするのに時間がかかるといったユーザーインターフェイスの問題もありましたが、5年前にシステムを見直し、その後は順調に受注できるようになっていったとのこと。
POD機についても、トランプやカルタに適した厚紙:四六判40kg(坪量465g/㎡)への対応、生産性や細かい文字の品質の高さ、表裏の見当精度の高さといった点を評価いただき、RICOH Pro C9200を採用されました。
制作室の加藤様
「RICOH Pro C9200を導入したことで、特に厚紙でも生産性が落ちないこと、さらに表裏の見当精度が良くなったことで、従来A4でしか出力できなかったものがA3まで出力できるようになり、その分面付の数も増え、原価低減にもつながっている」と、実際に制作に携わっている加藤様から喜びの声もいただきました。
そして、オンデマンド印刷機の生産性が上がっているため、ネットショッピングの6割を占める1部などの極小ロットのオーダーにも対応できているとのこと。さらに、「POD機で印刷するための極小ロットの面付についても、後加工を考えて効率的に行っています。これも自社の強みでしょうね」と語ってくださいました。
改善による効果
「何といってもカードビジネスが売上を牽引してくれています。
自社の強みであった断裁のスキルが活かせることで、品質面で圧倒的な他社差別化が出来ている、そのため価格競争にならないんです」と田中社長。
代表取締役社長 田中様
従来の来た仕事をこなす待ちの姿勢(請負型)ではなく、企画提案・印刷・製造まで一貫して請け負うワンストップサービスを実現できるようになったのが大きな効果であり、今後も目指していきたい姿。
断裁を中心とした後加工だけにとどまらず、オンデマンドプリンターによる出力と強みである「断ち」の技術を組み合わせたカードという商材で、価格決定権を持てるビジネスに業態変革できたことが、継続的なビジネス拡大に繋がっています。
今後目指したいこと&挑戦してみたいこと
その他に田中社長が力を入れてきたのが、人材の獲得と育成。バブルの頃から新卒の採用に力を入れ、今でもコンスタントに新卒を受け入れることができているといいます。さらに、社員が友人の方に「うちの会社で働かないか?」という呼びかけで入社した方もいるとか。日本一の断ち屋を目指し、採用した人材に断ちの技術を伝えていらっしゃいます。
「目指すのは、自分の子供を入社させたいと社員に思ってもらえる会社」。社員旅行やバーベキュー大会などの行事も行われ、和気あいあいとした社風は、人を大切に、仕事に実直に取り組むという社訓から来ているようです。田中社長は「良い社風作りによる人材育成が出来ているので、そこを継続強化していきたい」ともおっしゃっていました。
そして、田中社長のご子息である田中取締役は、セキュリティに強いIT系企業出身。
「自社の強みである断ちの技術とオンデマンドプリンターによるカードビジネスで業態変革ができた。次はITやAIを活用した新たな業態変革を目指したい」と語る田中社長。
「デザインができないお客様でも、生成AIによって自分が作りたい画像が作れるようになった。例えば、ご当地カルタなど、自動で読み札と取札が作れるようになると面白い」とアイディアは次々と浮かんでくるようでした。