補助金を学ぶ
2021/03/15
激動の2020年を「ものづくり補助金」でふりかえる(後編)
前編では、2020年の「ものづくり補助金」をコロナ禍の状況と、それに伴う補助金対応の変化を中小企業診断士の寶積 昌彦(ほうずみ まさひこ)先生に伺いました。
しかし「ものづくり補助金」は予算枠が限られるため、希望した全ての事業者が採択に至ったわけではありません。採択をされた事業者と、残念ながら採択されなかった事業者…そこにはどんな違いがあったのでしょうか?
寶積先生は、ある「最重要ポイント」があると指摘します。
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ものづくり補助金申請における最重要ポイント
2020年を振り返って、コロナ禍においてものづくり補助金が今後の印刷業の継続や回復に大きな役割を担うことがわかりました!ただ、限られた予算枠である以上、いかに綿密な事業計画を策定して行政に働きかけることができるかが、カギになりますよね。ものづくり補助金の申請時には、どんなポイントを押さえておけばいいのでしょうか?
ものづくり補助金を申請するにあたり、非常に重要なのは「加点項目」です。こちらのグラフをご覧ください。
特定の項目をクリアすることで、加点が得られます。このグラフは、その加点項目をクリアした事業者の採択率と、各公募における占有率を示しています。
加点項目の個数が増えるにつれて、折れ線グラフが上昇していますね。これは、どういうことを意味するのでしょうか?
棒グラフの数字は申請数に占める割合で、折れ線が、加点項目をクリアした個数別の採択率です。棒グラフを見ると、申請した事業者のうち「加点項目」0個の事業者は1~4次公募合計で4.9%。その採択率はわずか11.1%です。「加点項目」3個の事業者の数が一番多く、採択率は48.7%になります。4個だと63.1%、5個だと71.0%まで高まります。
なるほど。加点項目をクリアした個数が多いほど、採択に有利になるわけですね。
そうです。5個まで加点を積み上げられた事業者はわずか3.2%であることからもわかるように、5個の加点をとることは現実的には難しい面もあるでしょう。ただ、加点項目数が増えるほど採択率が上昇しているというこのデータを見ると、できるだけ加点項目を積み上げるのが得策だとわかりますよね。
これだけ採択率に差が出るのなら、加点項目は絶対に押えておきたいですね。でも先生、その大事な加点項目とは具体的にどういうものですか?
加点項目は、以下の4つです。賃上げ加点等については2つありますので、合計5項目です。
成長加点 | 「有効な期間の経営革新計画の承認を取得した(取得予定の)事業者」 |
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政策加点 | 「小規模事業者」又は「創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)」 |
災害等加点 | 「有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した(取得予定の)事業者」 |
賃上げ加点等 | ①「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明し ている事業者」 または、 「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画 を有し、従業員に表明している事業者」 |
②「被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組 む場合」 |
賃上げ加点については少し分かりにくいですが、そもそも「ものづくり補助金」の申請には「給与支給総額 1.5% 且つ 事業場内最低賃金 +30円以上」という要件があります。ここからさらに目標をアップすれば加点になりますよ、ということです。
なるほど。でもやっぱり、これらの項目で追加加点を得るためには所定の書類が必要なんですよね?
はい、もちろん必要です。次のような書類を用意しましょう。
成長加点 | 経営革新計画承認書等(承認前でも公募締切り日まで提出した書類でOK) |
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政策加点 | 開業届又は履歴事項全部証明書 |
災害等加点 | 事業継続力強化計画認定書 又は 連携事業継続力強化計画認定書 (申請中であれば計画書の写しでOK) |
賃上げ加点等 | ①賃金引上げ計画の表明書(基本的な提出書類において目標を変えたもの) |
②特定適用事業所該当通知書 |
特に成長加点の「経営革新計画」、災害等加点の「事業継続力強化計画」は作成をおすすめします。賃上げ加点等の「賃金引上げ計画の表明書」は、売上利益計画次第ではありますが、できれば提出して加点を狙いたいところです。
日本の今後の経済を左右する重要な補助金だからこそ、綿密な計画を練って行政に事業の有効性を示すことが必要なんですね。
一歩を踏み出すために補助金を活用しよう
スタートから今までのものづくり補助金の流れと、ものづくり補助金の採択を得るためのポイントをお伝えしましたが、いかがでしたか?
書類作成など一定の準備は必要とはいえ、コロナの苦境から前進するために得られる重要なサポートだと改めてわかりました。ものづくり補助金にまつわる印刷業界の動きも理解できて、興味深かったです!
しっかりと事業計画を立てて書類を準備することは、今後の自社の経営を見直すという意味でもとても有効ですから、採択を目指して申請するのがおすすめですよ!
今回は2020年を振り返りましたが、次回は2021年の展望をテーマに、長引くコロナ禍にどのように立ち向かっていくべきか教えてもらいたいと思います。先生、今日はありがとうございました!
株式会社GIMS
中小企業診断士
印刷業界専門コンサルタント
寶積 昌彦 様
立命館大学卒業後、ハマダ印刷機械株式会社入社。
各種印刷機、CTP等関連機器等多岐にわたる機械の営業担当を経て、営業管理・推進業務を担当。市場調査や製品開発企画とプロモーション、仕入商品・部材の調達管理や販売・製造台数の予測などの業務に従事。
その後、グラビア印刷会社の朋和産業株式会社に入社し、大手コンビニエンスチェーン、大手カフェチェーンの軟包材の営業を担当後、中小企業診断士として独立。独立後は公的機関の委嘱による中小企業支援を行う傍ら、印刷業界専門のコンサルティングを行う株式会社GIMSにも参画し印刷・製本会社の経営支援に従事している。