補助金を学ぶ
2024/05/30
2024年版:印刷会社でも活用できる「事業再構築補助金」を徹底解説!
印刷会社の皆さまにとって、設備投資やその先のビジネス拡大をサポートする制度としてものづくり補助金などの公的補助金は今や多くの会社に浸透し、定着しつつあります。ポストコロナにおけるペーパーレス化などの社会変容、原油価格・物価高等の影響による資材高騰など外部環境の変化が激しい中における対応として、多くの印刷会社様が活用を検討されているのではないでしょうか。
そんな苦境に対し、「新しい事業への転換」による打破を目指す事業者を支援する目的で3年前からスタートしたのが、「事業再構築補助金」です。これまで多くの印刷会社も活用している支援制度ですが、実は第12回公募からはこれまでの制度が見直され、申請枠や申請要件などが大きく異なります。
開始して3年が経過したものの、まだ印刷業界での浸透は十分とは言えない本補助金。「事業再構築ってどういうこと?」「実際どんな使い方が出来るの?」「うちの会社は補助の対象になるの?」といった疑問の声も多くうかがいます。
本コラムでは「事業再構築補助金」の概要から具体的な申請に必要な要件や情報、申請時の注意点など、今から活用を検討される印刷会社様に必要な情報をギュッと凝縮して解説させていただきます!
コレを読めば、事業再構築補助金活用に向けた一歩を踏み出せる、という内容になっていますので是非最後までお付き合いください。
本コラム監修者
株式会社GIMS 中小企業診断士
印刷業界専門コンサルタント
寶積 昌彦 氏
立命館大学卒業後、ハマダ印刷機械株式会社入社。
各種印刷機、CTP等関連機器等多岐にわたる機械の営業担当を経て、営業管理・推進業務を担当。市場調査や製品開発企画とプロモーション、仕入商品・部材の調達管理や販売・製造台数の予測などの業務に従事。
その後、グラビア印刷会社の朋和産業株式会社に入社し、大手コンビニエンスチェーン、大手カフェチェーンの軟包材の営業を担当後、中小企業診断士として独立。独立後は公的機関の委嘱による中小企業支援を行う傍ら、印刷業界専門のコンサルティングを行う株式会社GIMSにも参画し印刷・製本会社の経営支援に従事している。
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1. 事業再構築補助金とは?
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上回復が期待しづらい中、ポストコロナ時代の経済社会に対応するために、「新市場進出(新分野展開、業態転換)」「事業転換」「業種転換」「事業再編」「国内回帰」などの思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援するものです。
第12回公募からは、既存の事業類型が見直され、今なおコロナの影響を受ける事業者への支援やポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者への支援が重点化されています。
まずは再構築類型を選ぼう
事業再構築補助金で支援の対象となる再構築類型は、「新市場進出(新分野展開、業態転換)」「事業転換」「業種転換」「事業再編」「国内回帰」「地域サプライチェーン維持・強靱化」の6種類があります。申請にあたっては上記の類型のいずれかを選択する必要があります。
※各類型の詳細は下記「事業再構築指針」に公表されています
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/saikouchiku.html
それぞれ類型の概要は下記の通りです。
①新市場進出(新分野展開、業態転換) | 業種・事業が不変(例:1511 オフセット印刷業(紙に対するもの)のまま不変) 新たな製品の製造または新たなサービスを提供し、新たな市場に進出 |
②事業転換 | 業種は不変、事業を変更(例:152 製版業→151 印刷業など) 新たな製品の製造または新たなサービスを提供し、主たる事業を変更 |
③業種転換 | 業種を変更(例:E.製造業→G.情報産業など) 新たな製品の製造または新たなサービスを提供し、主たる業種を変更 |
④事業再編 | 会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を補助事業開始後に行い、新たな事業形態のもとに、新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業転換、業種転換のいずれかを行う |
⑤国内回帰 | 海外で製造、調達する製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備する |
⑥地域サプライチェーン維持・強靱化 | 地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠であり、その供給に不足が生じ、または、生ずるおそれのある製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備する |
※業種や事業の区分については総務省が定める日本標準産業分類に基づきます。下記ページをご参考ください。
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/02toukatsu01_03000023.html
自社はどの方向で“事業再構築”を行うのか、まずはその点を検討しましょう。
2. 事業再構築補助金の枠組みや補助額はどうなっている?
事業再構築補助金の第12回公募では、「成長分野進出枠(通常類型)」、「成長分野進出枠(GX進出類型)」、「コロナ回復加速化枠(通常類型)」、「コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)」及び「サプライチェーン強靱化枠」の5つの事業類型があります。
ここでは、印刷業界において申請可能性が高い2つの事業類型を紹介します。
事業類型 | 活用条件 | 補助金額・補助率 |
---|---|---|
成長分野進出枠(通常類型) | 成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者向けの枠組み | 【従業員数20人以下】100万円 ~ 1,500万円(2,000万円) 【従業員数21~50人】100万円 ~ 3,000万円(4,000万円) 【従業員数51~100人】100万円 ~4,000万円(5,000万円) 【従業員数101人以上】100万円 ~ 6,000万円(7,000万円) 中小企業補助率 1/2(2/3) ※1 ()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 ※2 廃業を伴う場合には、廃業費を最大2,000万円上乗せ |
コロナ回復加速化枠(通常類型) | コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者向けの枠組み | 【従業員数5人以下】100万円 ~ 1,000万円 【従業員数6~20人】100万円 ~ 1,500万円 【従業員数21~50人】100万円 ~ 2,000万円 【従業員51人~】100万円 ~ 3,000万円 中小企業補助率 2/3(※) ※従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員51人~の場合は1,200万円までは3/4) |
各枠組みとも、従業員数で補助金額が変わるのがポイントです。ちなみに補助金における「従業員」の定義は、労働基準法第20条に基づく「予め解雇の予告を必要とするもの」となっています。したがって、正社員のみならず期間の定めがなく使用されるパート・アルバイト、契約社員なども含まれることになります。なお、役員は従業員ではありません。
2つの事業類型(枠)について、もう少し詳しく見ていきましょう。
成長分野進出枠(通常類型)とは
成長分野進出枠(通常類型)は、ポストコロナに対応した、成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援するものです。
新たに取り組む事業の市場が拡大している(市場拡大要件)、もしくは現在の主たる事業の市場が縮小している(市場縮小要件)のいずれかに該当する必要があります。
印刷関連業の中では、「印刷業」「製版業」「製本業」「印刷物加工業」が市場縮小要件に該当するため、印刷業界の多くの企業が成長分野進出枠(通常類型)に申請できる可能性が高いと考えられます。
まずは、成長分野進出枠(通常類型)の申請を検討してみましょう。
コロナ回復加速化枠(通常類型)とは
コロナ回復加速化枠(通常類型)は、今なおコロナの影響を受け、コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援するものです。
補助額の上限が低いものの、補助率が成長分野進出枠(通常類型)以上に高い(2/3、一定額まで3/4)メリットがあります。
コロナ借換保証等で既往債務の借り換えを実施しており、補助事業の対象経費が比較的少額の場合には、コロナ回復加速化枠(通常類型)での申請を考えてみてください。ただし、応募申請時において、既往債務を借り換えていることが必要です。また、過去にコロナ借換保証等の制度を利用した実績があっても、すでに完済している場合は対象になりませんのでご注意ください。
コロナ借換保証等とは具体的にどのような制度を指すのか、後ほど説明します。
3. 事業再構築補助金を申請できる条件は?
また事業再構築補助金には、いくつか活用のための前提条件があります。自社がそちらを満たしているかチェックしましょう。
前提条件①:どのような事業者(企業)が対象になるか
事業再構築補助金を活用できる事業者については、
- 中小企業
- 中堅企業(資本金10億円未満)
- 一般社団法人、一般財団法人、企業組合といった法人
が対象となります。
前提条件②:認定経営革新等支援機関への相談
事業再構築補助金の申請時に提出する事業計画は、国が定める認定経営革新等支援機関と相談の上で策定する必要があります。そのうえで、計画策定において支援を受けた支援機関から「認定経営革新等支援機関による確認書」を入手していただきます。
認定の支援機関については、下記ページに記載がありますのでご確認ください。
https://ninteishien.force.com/NSK_CertificationArea
なお、補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けた上で、「金融機関による確認書」を提出しなければなりません。
確認書の入手には時間を要する場合がありますので、事業計画書はスケジュールに余裕をもって作成しましょう。
前提条件③:事業計画へ付加価値額向上を盛り込むこと
事業再構築を成立させるためのベンチマークとして、補助事業終了後3~5年で付加価値額、または従業員一人当たり付加価値額が成長分野進出枠(通常類型)では年率平均4.0%以上、コロナ回復加速化枠(通常類型)では年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定することが求められます。
※付加価値額=営業利益+減価償却費+人件費
前提条件④:「新市場進出」において必要な要件
5つの類型の中で、印刷業によく活用される「新市場進出」について、少し掘り下げて要件を確認していきましょう。業種・事業は変えずに、新たな製品やサービスを元に新市場に進出するこの類型では、下記3つの要件があります。
事業再構築の類型 | 必要となる要件 | 要件を満たす考え方 |
---|---|---|
新市場進出 | ①製品等の新規性要件 | ①過去に製造等した実績がないこと |
②定量的に性能又は効能が異なること | ||
②市場の新規性要件 | 既存事業と新規事業の顧客層が異なること | |
③売上高10%要件 | 新たな製品等の売上高が総売上高の10%以上となること |
「③売上高10%要件」については、事業実施後3年から5年の間に、再構築事業の売上が全社売上の10%を占める計画となっている旨を事業計画書に記載する必要がありますのでご注意ください。
※新市場進出以外の類型についてご活用の場合、詳細は下記「事業再構築指針」を参照ください。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/saikouchiku.html
前提条件⑤:「成長分野進出枠(通常類型)」のみの条件
成長分野進出枠(通常類型)においては、複数ある要件のうちいずれかに該当する必要がありますが、多くの印刷会社様が「市場縮小要件」に該当するため、市場縮小要件に絞ってご説明します。
- ■市場縮小要件
現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施すること
前述のとおり、印刷関連業の中では、「印刷業」「製版業」「製本業」「印刷物加工業」が、市場縮小要件の対象業種に指定されています。
前提条件⑥:「コロナ回復加速化枠(通常類型)のみの条件
応募申請時において、コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていることが必要となります。印刷業界で利用の可能性があるコロナ借換保証等の制度は次のとおりです。
- (1)伴走支援型特別保証(コロナ借換保証)
- (2)コロナ経営改善サポート保証
- (3)新型コロナウイルス感染症特別貸付
- (4)新型コロナ対策資本性劣後ローン
- (5)[新型コロナ関連]マル経融資
- (6)[新型コロナ関連]沖縄雇用・経営基盤強化資金
また、コロナ回復加速化枠(通常類型)としては再生計画を策定中の事業者への要件もありますが、申請としては少ないためここでは解説を省略します。
4. 事業再構築補助金はどんなものに活用できる?
事業再構築補助金は、機械装置以外に建物費が補助対象となるなど幅広い経費が対象になっているのが特徴です。ここでは、印刷業界で申請する可能性が高いものを中心に内容と留意点を挙げておきます。
機械装置・システム構築費 | 専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具、ソフトウェア・システムなど |
---|---|
建物費 | 専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費
|
クラウドサービス利用費 | 専ら補助事業のために利用するクラウドサービスやWebプラットフォーム等の利用費
|
- ※補助事業=事業再構築補助金を活用して行う事業のこと
上記の他、外注費や広告宣伝・販売促進費など事業実施に必要な経費については幅広く対象としています。詳しくは公募要領をご確認ください。
なお、経費については下記の点も要件となっていますのでご注意ください。
<保険への加入義務>
補助事業に要する経費が1,000万円を超える案件では、最低でも事業計画期間終了までの間、本事業により建設した建物等の施設または設備を対象として、申請した補助金の補助率以上の付保割合を満たす保険または共済への加入義務を負います。
- ※付保割合:設備や建物の費用の補助率以上の割合で保険に加入する必要がある、というものです
5. 申請にあたって必要な準備
まず事業再構築補助金の申請は「電子申請のみでの受付」です。電子申請にあたってはGbizIDのID/パスワードが必要となりますので、未取得の場合は下記サイトにて手続きください。
https://gbiz-id.go.jp/
全ての枠組みで準備する必要がある書類
次に必要な書類についてまとめます。まずはどの枠組みで申請する場合でも必要となる8種類の書類です。
- 1.事業計画書
- 2.認定経営革新等支援機関確認書
- 3.金融機関確認書(金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する場合のみ)
- 4.直近の決算書2期
- 5.財務状況(ミラサポplus 事業財務情報)
ミラサポplusの財務情報は事業再構築補助金申請ポータルと別サイトになります。
https://mirasapo-plus.go.jp/ - 6.従業員名簿
- 7.固定資産台帳
- 8.直近の法人事業概況説明書の控え
第12回公募より、固定資産台帳の提出が求められるようになりました。これは、補助対象とする機械装置等が、既存事業で使用している 機械装置等の置き換えでないことを確認するためです。ご注意ください。
「成長分野進出枠(通常類型)」申請時の追加書類
新たに取り組む事業が市場拡大要件を満たすことの説明書、または現在の主たる事業が市場縮小要件を満たすことの説明書の提出が必要となります。
ただし、市場縮小要件の対象業種に指定された「印刷業」「製版業」「製本業」「印刷物加工業」の場合、要件を満たすことの説明や根拠は不要であり、既存事業の概要を記載するのみで問題ありません。
「コロナ回復加速化枠(通常類型)」申請時の追加書類
応募申請時において、コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていることを確認するため、借換先の金融機関等による「コロナ借換要件・加点確認書」の提出が必要です。
6. <重要!>加点申請の対策
事業再構築補助金においては、審査における加点項目がいくつか用意されています。事業の審査に加えて点数が上乗せされるため、加点があると採択に向けて非常に有利に作用します。是非対策しましょう。
加点項目
1. パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点(コロナ回復加速化枠は対象外)
パートナーシップ構築宣言とは、事業者がサプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指し、「発注者」側の立場から、「代表権のある者の名前」で宣言するものです。比較的簡便な申請で加点を得ることができます。
2. 経済産業省が行うEBPMの取組への協力に対する加点
この加点は、データに基づく政策効果検証・事業改善を進める観点から、経済産業省が行うEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)の取り組みに対して、継続的な情報提供が見込まれるものであれば加点する、というものです。
ただ、こちらは特に書類を用意するというものではなく、電子申請段階でチェックボックスにチェックを入れるだけですので、ぜひ加点を受ける事をおすすめします。
それでは次に申請の際に提出する事業計画書について説明します。
7. 事業計画書の書き方
事業計画書は、以下、1~4の項目について、A4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内)で作成します。
≪事業計画書に記載する内容≫
- 1.補助事業の具体的取組内容
- 2.将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
- 3.本事業で取得する主な資産
- 4.収支計画
詳細な書き方についてお悩みの方は、リコージャパンでは印刷業に精通した中小企業診断士とタッグを組み無料相談会を実施しております。是非お気軽にご相談ください。
8. その他申請におけるポイント・留意点
ここでは、申請の際によくいただく質問を中心に、申請におけるポイントや留意点について取り上げます。
<よくあるご質問>
- Q.申請時に、設備や建物などの見積りは必要ですか?
- A.申請時においては見積書の添付は必須ではありません。ただし交付申請以後の手続きを円滑に進めるために用意をしておくことをお勧めします。
- Q.建物の改修など事業の関係をどのように説明すればよいでしょうか?
- A.建物費を計上する場合は平面図を用意し、事業に使用するスペースを区分しておくことで計上した経費を明確化させるようにしましょう。
- Q.補助金の対象となるのは、採択後に購入した設備のみでしょうか?
- A.第11回公募まで実施していた「事前着手制度」は原則廃止となりました。第12回公募から新たに申請する事業者の採択前の購入は補助金の対象となりません。
<申請時に気を付けておきたいポイント!>
- ①同一法人・事業者が複数申請を行っている場合は1社しか申請できない
親会社が議決権の50%超を有する子会社が存在する場合、親会社と子会社は同一法人とみなし、いずれか1社のみでの申請しか認められません。また、親会社が議決権の50%超を有する子会社が複数存在する場合、親会社と複数の子会社は全て同一法人とみなし、このうち1社のみでの申請しか認められません。
- ②売上高が10億円以上の企業は事業を区分して売上3億円以上の事業部を対象に申請可能
事業再構築の5つの分類のうち、「新市場進出(新分野展開、業態転換」や「業態転換」における「新事業売上高10%要件」について、「売上高が10億円以上であり、かつ、事業再構築を行う事業部門の売上高が3億円以上である場合には、当該事業部門の売上高の10%以上であること」を満たすことをもって申請を行う場合には、直近の決算において、売上高が10億円以上であり、事業再構築を行う事業部門の売上高が3億円以上であることが分かる書類を追加で提出してください(決算書において分かる場合には追加での提出は不要です)。
- ③第12回の審査項目
第12回から「新規事業の有望度」などの審査項目が加わりました。具体的には以下のような点がチェックされる予定です。
- 補助事業で取り組む新規事業が、自社がアプローチ可能な範囲の中で、継続的に売上・利益を確保できるだけの規模を有しているか。成長が見込まれる市場か。
- 補助事業で取り組む新規事業が、自社にとって参入可能な事業であるか。
・免許・許認可等の制度的な参入障壁をクリアできるか。
・ビジネスモデル上調達先の変更が起こりにくい事業ではないか。
- 競合分析を実施した上で、顧客ニーズを基に、競合他社と比較して、自社に明確な優位性を確立する差別化が可能か。
・代替製品・サービスを含め、競合は網羅的に調査されているか。
・比較する競合は適切に取捨選択できているか。
・顧客が商品やサービスの購入を決める際に重視する要素や判断基準は明らかか。
・自社が参入して、顧客が商品やサービスの購入を決める際に重視する要素や判断基準を充足できるか。
・自社の優位性が、容易に模倣可能なもの(導入する機械装置そのもの、営業時間等)となっていないか。
新規事業における業界の競争環境を分析したうえで、業界内での自社の競争力、差別化、優位性などを示すことなどが求められます。
以上、申請におけるポイントになります。
9. 直近のスケジュールをチェック!
現在、第12回の公募が開始しています。これまでより公募開始から締切までの期間は長く設定されていますが、早めに準備を進めていきましょう。
10. 実際の採択事例を見てみよう
さて、ここまで概要から申請方法・スケジュールとみてきましたが、「事業再構築補助金の事は大体分かったけど、もう少し具体的にどんなことに使えるか知りたい」という声もあるかと思います。
過去の採択結果から、印刷会社様がオンデマンド印刷機の導入・活用などを行ってどのような事業再構築を計画した採択事例があるのかいくつかピックアップしてみました。
再構築補助金の採択例
概要 | |
---|---|
A社 | コロナで需要が増加した自治体関連の通達物発送業務を請け負う事で新分野展開 |
B社 | オンデマンド印刷機を活かした新しいパッケージ・紙袋の製造分野への新分野展開 |
C社 | オンデマンド印刷による絵本自費出版とプラットフォームの構築による新分野展開 |
D社 | 伝統和紙を活用した地域事業者向け紙製品・地元産品の製造販売による新分野展開 |
E社 | デジタル可変印刷を活用したラベル・タグの偽造防止印刷展開による新分野展開 |
F社 | プロ向け・セルフ印刷型のプリントショップ開設による新分野展開 |
顧客のニーズや自社の強みを元に、どのような“再構築”が自社にとって最適なのか、というのをこれらの事例から検討することが出来そうです。
11. 印刷会社の採択率についてチェックしよう
最後にここまでの事業再構築補助金における採択率について見てみましょう。
<第1回から第11回までの採択の概要>
全体申請 | 全体採択 | 採択率 | 印刷業 | 比率 | |
---|---|---|---|---|---|
第1回 | 22,231者 | 8,016者 | 36.1% | 99者 | 1.2% |
第2回 | 20,800者 | 9,336者 | 44.9% | 73者 | 0.8% |
第3回 | 20,307者 | 9,021者 | 44.4% | 95者 | 1.1% |
第4回 | 19,673者 | 8,810者 | 44.8% | 73者 | 0.8% |
第5回 | 21,035者 | 9,707者 | 46.1% | 104者 | 1.1% |
第6回 | 15,340者 | 7,669者 | 50.0% | 56者 | 0.7% |
第7回 | 15,132者 | 7,745者 | 51.2% | 80者 | 1.0% |
第8回 | 12,591者 | 6,456者 | 51.3% | 46者 | 0.7% |
第9回 | 9,369者 | 4,259者 | 45.4% | 43者 | 1.0% |
第10回 | 10,821者 | 5,205者 | 48.1% | 37者 | 0.7% |
第11回 | 9,207者 | 2,437者 | 26.5% | 18者 | 0.7% |
印刷業採択数と占有比率の推移
他の業種では積極的に活用が進んでいる補助金ですが、まだまだ印刷会社様の利用は少ない印象です。直近の採択率はやや低下していますが、計画的に準備を進めていけば十分にチャンスはあります。
また、事業再構築補助金は、補助金上限額も大きく、幅広い経費が補助対象になるなど、新たな設備の導入を検討している事業者様にメリットの大きい補助金です。是非今一度ご検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
いかがだったでしょうか。2021年度から新たに始まった「事業再構築補助金」は、ポストコロナにおける印刷需要の低下などで「何かを変えなければならない」と考えている多くの印刷会社様にとって、非常に興味深いものと言えるのではないかと思います。
既存商品や既存事業を変革し、新たな事業を創造するのは簡単なことではありませんが、だからこそいまチャレンジすべき事なのかもしれません。
Print Compass編集部(リコージャパン)では、POD機やインクジェットプリンターなどの導入に向けた事業再構築補助金の具体的な活用について、印刷業専門の中小企業診断士と連携した無料の個別相談会、を開催しております。
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