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省エネ補助金は印刷設備更新に活用できる?専門家が詳しく解説

省エネ補助金は印刷設備更新に活用できる?専門家が詳しく解説

※本コラムは2024年5月10日時点の情報を元に記載しておりますのでご留意ください。

エネルギーコストの高騰や気候変動の影響で、省エネルギー活動は印刷会社の皆様にとり重要な課題となっています。すでにエアコン温度の設定など日常の運用管理、LED照明や省エネタイプエアコンなど照明・空調関連機器の更新は進んできています。

しかし印刷会社で多くのエネルギー消費するのは印刷機などの設備関連なので照明・空調周りだけの省エネには限界があるのも事実です。

照明・空調関連機器の更新に自治体や国の省エネ補助金を活用された会社も多いと思いますが、実は印刷機の更新にも省エネ補助金が活用できることをご存じでしょうか。

今回は一般社団法人環境共創イニシアチブ(以下SII)が公募する「省エネルギー設備への更新を促進するための補助金」(以下:省エネ補助金)について、その概略や注意点をご紹介し、印刷機の更新をお考えの皆様の参考にしていただければと思います。

本コラム監修者

株式会社GIMS 中小企業診断士 寶積 昌彦 氏

株式会社GIMS 中小企業診断士
印刷業界専門コンサルタント
寶積 昌彦 氏

立命館大学卒業後、ハマダ印刷機械株式会社入社。

各種印刷機、CTP等関連機器等多岐にわたる機械の営業担当を経て、営業管理・推進業務を担当。市場調査や製品開発企画とプロモーション、仕入商品・部材の調達管理や販売・製造台数の予測などの業務に従事。

その後、グラビア印刷会社の朋和産業株式会社に入社し、大手コンビニエンスチェーン、大手カフェチェーンの軟包材の営業を担当後、中小企業診断士として独立。独立後は公的機関の委嘱による中小企業支援を行う傍ら、印刷業界専門のコンサルティングを行う株式会社GIMSにも参画し印刷・製本会社の経営支援に従事している。

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目次

1. 省エネ補助金とは?

省エネ補助金は、事業者が自社の工場やビルの設備を「省エネ型設備」へ更新することを支援するものです。

対象となる設備の種類として、「高効率空調」「高性能ボイラ」「低炭素工業炉」「変圧器」「産業用モータ」「制御機能付きLED照明器具」などに加えて、印刷会社様の最もなじみ深い「印刷機」も入っており、総計15種類が指定されています。

補助率1/3で補助上限額1億円なので3億円までの設備の更新が検討可能と考えられます。またこうした補助金は中小企業に限定される場合が多いのですが、省エネ補助金では一定の要件はあるにしても大企業も対象となっているのが特徴です。

それでは、省エネ補助金の詳細内容や、実際の申請方法について、ここからみていきましょう。

2. 省エネ補助金における印刷会社におすすめの事業区分

省エネ補助金は4つの事業区分に別れており、それぞれに補助対象経費、補助率や補助金限度額が異なります。その中で一般的な印刷設備更新を考える際に主に対象となり、印刷会社様におすすめするのは「(Ⅲ)設備単位型」です。

これは「SIIがあらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、SIIが補助対象設備として登録及び公表した」指定設備への更新を要件としたものです。15種類の指定設備の中に「印刷機械」も含まれています。

(Ⅲ)設備単位型の補助対象経費・補助額は?

補助率は補助対象経費の1/3以内、補助金の上限額は1億円です。

補助対象経費は給紙から排紙までの印刷機本体が補助の対象で、設置に伴う配線や配管、オプション設備、設計費、運搬費、据付・工事費、既存設備の撤去や廃棄費用、消費税等の経費は補助の対象にならないので、事前に費用を試算する場合は注意しましょう。

補助率 1/3
補助上限額 1億円
対象範囲 設備本体(給紙から排紙までの装置)
※オプションや設置工事等は対象外

指定設備に登録される印刷機械とは?

印刷機械で対象となるのは有版印刷機、デジタル枚葉印刷機、連帳デジタル印刷機で、SII資料では4月末時点で印刷機メーカー各社合計約560機種が登録されています。検討している印刷機が補助対象設備に含まれるかは、SIIのホームページで検索するか、印刷機メーカーに問い合わせれば確認することが出来ます。

なおリコー製の設備としては、デジタル枚葉印刷機RICOH Pro Z75、連帳デジタル印刷機RICOH Pro VC40000、VC60000、VC70000、VC80000の5機種が対象機種となります。

設備の選定と注意点は?

  • 1.「Ⅲ設備単位型」では印刷機以外の製版設備や製本関連設備などは対象外です。また印刷機でも、SIIに登録された補助対象設備のみが対象となり、それ以外の印刷機は補助の対象になりません。
  • 2.また補助対象は給紙から排紙に至る印刷機本体が対象であり、オフラインの設備は補助対象にならないので注意が必要です。検査機などもオプション品は対象外とされているので、検討の際にメーカーやSIIに事前に確認しましょう。
  • 3.更にそもそもの前提として、この補助対象事業は既存設備を先の補助対象印刷機に「更新」する場合に適用されます。新たに導入する「新設」や既存設備を撤去しない「増設」あるいは故障等で稼働していない設備の更新などの場合は補助対象とはなりません。
  • 4.SIIに登録された補助対象設備は、下記の基準を満たしたものであり、補助対象設備を選択する限り既存機との省エネ効率を皆さんが気にする必要はありません。
生産設備における補助対象設備の基準
2013年以降に販売が開始されたモデルであること。
(最新モデルである必要はないが、中古品は対象外)
生産性の向上に資するものの指標(エネルギー効率、生産効率)が、同一の製造事業者における一代前モデルに比較して年平均1%以上向上している設備であること
例)2018年販売開始のモデルの一世代前が2015年販売開始の場合、3%以上

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3. 省エネ補助金(設備単位型)の対象

補助金の交付申請を行うことができる事業者の要件は9項目挙げられています。多くの補助金では交付の対象は中小企業や個人事業主に限定されていますが、本補助金では要件を満たす大企業も申請が可能です。

印刷会社に関連する部分を抜き出すと以下の通りです。 申請を検討する時は要件をクリアできているか事前に確認しましょう。

  • 国内において事業活動を行い、更新設置する設備も国内で稼働する。
  • 直近の年度決算において債務超過でない。
  • 年間のエネルギー使用量が原油換算1,500kl以上の特定事業者等の場合は、省エネ法に基づく「中長期計画書」及び「定期報告書」を提出している。
  • 大企業(資本金3億円超かつ従業員数300人超)の場合は、省エネ法の「事業者クラス分け評価制度※」で「Sクラス」ないし「Aクラス」であるか、中長期計画書の「ベンチマーク指標の見込み」に記載された2030年度の見込みがベンチマークを達成するか、のいずれかを満たしている。

4. 省エネ補助金の公募タイミング

省エネ補助金の公募は通常年度初めに行われ、昨年度(2023年度)は4月に一次公募、6月に二次公募が行われ、今年度(2024年度)の一次公募は2024年4月22日に応募が終了し、2次公募は5月下旬から6月下旬が予定されています。1次公募の予算は2024年度分が135億円と複数年度事業の2025年度分が約30億円と公表されており、今回は複数年度事業の申請が可能になったのが特徴です。

複数年度事業の申請とは?

簡単に言えば、発注から設置までが年度をまたぐような大型の設備投資も対象になったということです。従来の単年度申請の場合、例えば4月22日締切りの1次公募が6月上旬に交付決定され、それから事業を開始して設備発注し2025年1月31日までに既存設備の撤去、補助対象設備の設置、検収、支払いを完了させる必要があります。これが複数年度の場合、2026年1月30日まで使えるため、大型印刷機のように発注から設置まで納期が長い設備への利用が検討できるようになります。

5. 省エネ補助金の申請方法

省エネ補助金の申請を考えるのであれば、まず「公募要領」を確認しましょう。

「公募要領」の入手はSIIのホームページからダウンロードできます。事業区分で分かれているので、「(Ⅲ)設備単位型」を活用する場合は「(Ⅲ)(Ⅳ)用」を入手しましょう。

「公募要領」以外にも実際の申請に当たっては「交付申請の手引き」や「省エネルギー量計算の手引き」、「(別冊)補助事業ポータル」もあわせて参照してください。

具体的な申請の流れ

申請を行う際の基本的な流れは「①書類の準備・作成」→「②アカウント登録」→「③ポータルへの入力」→「④書類の出力・郵送」です。

ちなみに「ポータル」と言うのは、申請に必要な情報を入力するための補助事業専用のサイトのことで、アカウント登録を行うとSIIからのメールでURLが通知されます。

①必要書類の準備・作成

申請書の作成や添付の為に必要な書類は主に下表の通りです。これらに加えて申請区分により必要な書類もあるので「公募要領」や「交付申請の手引き」を良く確認して漏れなく準備しましょう。

会社情報 業種、資本金、従業員数が確認できるパンフレット等
決算書 直近1年の単独決算の貸借対照表を法人名が分かる表紙を付けて提出
中小企業であることの宣誓書 中小企業である場合、指定様式に必要事項を記入して提出
商業登記簿謄本 発行6か月以内で、写しでも可
補助対象設備を導入する建物の登記簿謄本 発行6か月以内で写しでも可
建物の現在事項証明書でも可
建物所有者と設備使用者が異なる場合は指定様式の「設備設置承諾書」に必要事項を記入して提出
  • 各指定様式はSIIのホームページの「申請様式一式」からダウンロードして入手します。

★省エネ効果計算の考え方とは?★

申請する上で要になる「省エネルギー量」の計算は、事業区分「Ⅲ設備単位型」で補助対象設備により申請する場合は「指定計算」といって、ポータルに導入設備の稼働時間等を入力することで自動計算されるように簡略化されています。

省エネルギー量の計算のために必要な書類は以下の2つです。

  • 1.メーカーから発行された「製品情報証明書」
  • 2.既存設備の稼働状況が把握できる作業日報等(各月生産量1年間分)

ポータルに「製品情報証明書」に記載された情報と既存設備の稼働状況から必要な情報を選択・入力すると、「既存設備の原油換算使用量(kl/年)」-「導入予定設備の原油換算使用量(kl/年)」=「省エネルギー量(kl/年)」を自動計算してくれます。

なお既存設備の稼働状況が把握できる作業日報等は申請時に提出の必要はありませんが、追って提出を求められる場合もあるようなので、保管しておきましょう。

★見積の入手について★

また印刷機メーカー等他社に依頼して準備する書類も早めに入手しておきます。特に見積書は3社分が必要なのと、補助対象経費と補助対象外経費の区分などチェックすべき項目が多く不備があると再取得が必要になるので早めに手配しておきましょう。

②アカウント登録

ポータルにログインするには公募期間にSIIホームページ事前にアカウントの登録が必要です。登録後SIIからユーザー名等の通知メールが届きますが、届くまでに数日かかる場合があるので、早めにすませておきましょう。

③ポータルへの入力

申請の材料が揃い、アカウント登録が完了したら、SIIの補助事業申請ポータルにログインして、必要な情報を入力していきます。

ポータル入力は一度に完了させる必要は無く、途中で保存することが出来るので、一度に行うのではなく、早めに順次入力を始めることをお勧めします。

一定時間(約60分)ポータルを操作しないと、自動でログアウトされ作成中のデータが消える場合があるので途中でこまめに保存しておくようにします。

入力が一通り終わって「入力完了」をクリックしてしまうと再編集できなくなるので、その前に仮画面で内容をよく確認しましょう。

④書類の出力・郵送

ポータル入力が完了したら、作成した書類を印刷し、作成・入手した他の書類と併せて2冊のファイルを作成します。1冊がSIIへの提出用で、もう1冊は自社の控えです。提出後に問い合わせや修正依頼に必要なので必ず控えは残します。

提出は郵送のみ受け付けです。宅配便は使用できず、持込も不可となっていますので注意しましょう。

▶「活用してみたい!けど何から準備すればいいだろう…」と思った方、ぜひお気軽にご相談ください

6. 最後に

省エネ補助金の公募申請には様々な条件があり、手続きも手間が多いのは確かです。それでもご紹介した「Ⅲ設備単位型」などは省エネルギー量計算がかなり自動化されており使い勝手は向上しています。省エネや印刷機の更新をお考えの印刷会社様はこれを機会に検討してみてはいかがでしょうか。

「実際に自社の機器更新に活用できるのだろうか?」

「もっと細かく申請に向けた情報を教えてほしい」

という方向けに、リコージャパンでは無料の補助金個別相談会を随時開催しております。印刷会社様ごとの設備投資予定や状況をお聞かせいただき、補助金活用の専門家がアドバイスをさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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