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印刷会社のDX、カギは「小さく始める」こと

印刷会社のDX、カギは「小さく始める」こと

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が日本に浸透したのは、経済産業省が2018年にDXレポートを出してからと言われていますが、そこから5年以上が経過してきました。

コロナ禍を経て世界中で大きくDXが進んだ中で、当然印刷業にもDXの波は訪れており、様々な展示会やイベントでDXが主題に置かれています。その一方で、DXは何か取り組まなければいけないと思っているけれど、何からスタートすれば分からない、という言葉もまた多くの場面でうかがいます。

今回Print Compass編集部は、そんな印刷会社様に対して「小さく始めるDX」を推進しているリコージャパン(株)・関 克資氏にインタビューを行いました。

DXの第一歩の参考にしていただければと思います。

ノウハウの実践方法をまとめた
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目次

「DXをすること」が目的になってはいけない

編集部:DXに取り組んでいきたいが、何から取り組めばいいのか分からない、という印刷会社様の声をよくうかがいます

:そういったご相談を印刷会社様からいただくことは多いのですが、デジタル化、という意味では既に何かしらを行っている印刷会社様は多いと思います。

たとえば営業さんがスマホで社内メンバーとやり取りをしたり、PCで見積を作ったり、というのもデジタル化ですよね。じゃあデジタル化とDXは何が違うのか、DXの定義は様々あると思いますが、個人的にはデジタルで出来ることをいくつか組み合わせて、連動して効果を上げていくことがDXかな、と思っています。効果を上げるというのは、業務を効率化する、と言い換えてもいいかもしれません。

写真:リコージャパン・PP事業部の関 克資氏

リコージャパン・PP事業部の関 克資氏

昨今ではDXという言葉が独り歩きしていますし、展示会や本、Webの中でもDXという言葉があふれていますが、企業にとって大事なことは「DXすること」ではないですよね。大事なのは「DX」をすること、ではなく、デジタルの力を使って、いまある課題を解決すること。極論、デジタルの力を使って課題を解決できれば、どんな形でも「DX」と言えると思っています。なので、あまりDXを難しく考えすぎず、まずはデジタルの力を使って解決したい業務上の課題は何なのか、を決めることが大事なのかなと思います。

DXはもっと小さく始めていいんです

編集部:課題を解決する、というとシンプルなようですが、そもそも課題が何なのか考えるのが難しいという話もあると思います

:DXをすごく大きなもの、壮大なもの、と捉えてしまうと、DXで解決できる課題を考えることが経営課題を考えるような大きなもののように見えてしまい、経営層の方以外ではなかなか難しいものに映ってしまいがちかもしれません。

いきなり経営レベル・全社レベルの会社の根幹になるような業務がデジタルの力で効率化できればもちろん大きな効果を発揮しますが、えてしてそういった業務を変えるのは大きな労力がかかり、費用も大きくなることが多いです。解決方法も、いくつものシステムを組み合わせたり、カスタマイズしたり、と非常に複雑になるケースが多いと思います。結果的に、考える時間が取れなくなったり、社内コンセンサスが取れなくて頓挫する、というのはよく聞くお話です。

なので私がよくお伝えするのは、もっと小さな課題の解決でもDXになる、ということなんです。

写真:リコージャパン・PP事業部の関 克資氏

「DXを壮大にとらえすぎないことが大事だと思っています」

1人1人の従業員の方の目の前には、小さくても様々な不具合や不満、非効率があると思います。面倒だな、と思いつつ、毎日実施している業務はどんな部門・工程でも少なからずあるのではないでしょうか?

そういった1つ1つの小さな課題をデジタルの力で解決していくことも、まぎれもなくDXなんです。小さなコストで、小さな課題を解決する。そしてそうして解決した小さなDXを組み合わせて、少し大きな課題を解決する。そういった形で、段階的に課題を解決してする、階段型のDXを推進するのが、特に大きな投資が難しい会社には最適な形ではないかと考えています。

ロボットが指示書を読んで自動で印刷する、これって夢物語じゃないんです

編集部:小さな課題というと、具体的にはどういったものがありそうでしょうか?

:課題解決の方向性は、大きく分けると3つあると思います。「ミスを減らすこと」、「属人化を無くすこと」、「リスクを減らすこと」の3つです。

1つ目の「ミスを減らす」については、イメージしやすいかと思います。

例えば、印刷指示書に書いてある通りに印刷設定を行う、という業務。多くの印刷会社様で毎日のように発生する業務ではないかと思いますが、人が関わる以上必ずミスは起こりますよね。部数や仕様を見間違えた結果、印刷ミスが出てせっかく印刷したものがヤレになってしまう、という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。印刷ミスは当然利益減に繋がるので、シビアな問題です。

とはいえ、ミスをしないように気を付けよう、と言っても人間は必ずミスをするもの。ミスをしたら再発防止策を出して、ダブルチェックして…などと行っていくと、従業員の方の負荷も増え、だんだん仕事の効率性が下がり、結局ミスと同様に利益減に繋がったり、従業員満足度が下がって最悪退職、などというケースもありそうです。

こういった「ミスが起きる業務」に目を向けて、それってデジタルの力で解決できないかな?と考えてみることがポイントです。

例えば上記のようなケースでは、印刷指示書を自動で読み込み印刷指示をかけてくれるロボットを使う、というような解決策があるかもしれません。これは夢物語では無くて、実際にRPAというパソコン上で動くロボットプログラムのようなものを使って、解決した印刷会社様があります。それは莫大な費用のかかる大企業でしか出来ないことではなく、現実的に中・小規模の企業でも取り組めることなのです。

画像:例として上がった印刷指示の自働化のイメージ

例として上がった印刷指示の自働化のイメージ

「指示書の内容を転記する」というのは一見すると普段の業務中のほんの1つの行動ですが、ここの業務ミスを少なくできれば、少なからず効果的ですし、従業員の方も安心ですよね。従業員を守るという考え方も、小さな課題を見つける1つの方法と言えそうです。こういった小さな業務の課題を解決する、という視点がDXのポイントです。

まずは、どんな小さな業務課題でも、「もしかしたらデジタルの力で解決できるのでは?」と疑問を持っていただくことが重要です。もちろん解決できることできないこと、解決にかかる費用はケースバイケースですが、まずはご相談いただければ一緒に考えられます。

DXは自社や従業員を守る盾にも、自社の新しい武器にもなる

編集部:2つ目の「属人化を無くす」についてはどうでしょうか?

:印刷業務における属人化、いわゆる職人さんしか印刷作業が出来ない、というのはよく聞く話ですし、それをPOD機やデジタルインクジェット機に変えて少しずつ属人化を減らしていく。これは我々もよくご提案しているデジタル化で多くの印刷会社様もイメージできると思いますが、印刷業務以外でも属人化はあると感じています。

例えば、見積りや校正のやりとり・管理が営業個人任せになっている会社、結構あるんじゃないでしょうか?その人がいるうちは良いですが、突然辞めてしまったり、会社に来られなくってしまうことはあるものです。後任の担当者が困るのはもちろん、社内で情報連携が出来ていないと、増刷等の継続的なお取引をしているお客様からの信頼を失ってしまいかねません。そうなると、会社としては大変な損失ですよね。

写真:リコージャパン・PP事業部の関 克資氏

「実際に印刷会社様とお話していくと、属人化のお悩みは非常に多いんです」

「過去の営業資料を必要な時に確認する」というのも1つの小さな業務ですが、ここを解決するのもDXと言えそうです。さらに言えば、その課題を解決することで、芋づる式に他の課題が見つかったり、解決に繋がることもあるかもしれません。

資料の保管、他の部署との共有、社外からのデータ閲覧、など「これも出来るといいよね」が実は1つのツールで解決できた、ということはよくあることです。既存のシステムと連携したり、1つのツールの使い方を広げることで、どんどん解決できることが増えていく、まさに冒頭にお話しした「デジタルとデジタルの組み合わせで課題を解決する=DX」の姿です。その第一歩が、小さな課題を見つけることなんです。

ですので、まずは最初の小さな課題を見つけて、解決に向けて動くことが何よりも重要です。

編集部:最後に3つ目の「リスクを減らす」というのはどういうことでしょうか?

:デジタルを活用することの非常に大きなメリットの1つとして、「データが残る」ということがあります。エビデンスが残る、と言い換えてもよさそうです。

例えば、クライアント企業などとトラブルが起こった後に「原因はどこにあるのか?」というのは必ず論点になると思います。印刷会社様としては、作業を滞りなく行いしっかり納品したはず、という状況だとしても「○○の作業は△△時××分に完了した」とデータ化されていないと原因をはっきり特定することがしにくく、クライアントとの間でトラブルになる可能性もあるかもしれません。その状況は、自社・従業員にとっては少なからずリスクが潜んでいると言えそうです。

自社の工程をデジタル化することは、こういったトラブルの際にエビデンスが出しやすくなり、結果として自社のリスク削減に繋がります。

例えば、検品時に枚数をカウントする業務。人がカウントすると、「やりました」という以上のエビデンスは残りません。そこを、デジタルでエビデンスが残る計数機を使い、計測されたデータが自動的に会社のクラウドデータベース上に格納される、という仕組みを作れば、「納品された部数が間違っている」というトラブルの際に、すぐにデータが出せるのではないでしょうか。

イメージ:リスクの高い業務

部数はもちろん、封入の仕事では中身の付け合わせ確認などもリスクの高い業務

トラブルの際に自社や従業員をリスクから守れることはもちろん、そのようなエビデンスを出せることは、営業上の強みになることもあるでしょう。クライアントからしても「ミスを起こしにくい仕組みが出来ている会社」というのは、取引を行う際に大きな安心ポイントになります。

例で出した「部数を確認する」というのは数ある業務の中の1つですが、そこにリスクが潜んでいると感じた場合、デジタル化をある種のチャンスと捉えることも出来るのではないでしょうか。

また、データ化することで、部門や会社の今後の方針を考えるときの指標にもなるでしょう。データに基づいて判断を出来るようになると、判断における間違いが少なくなるのはもちろん、従業員に説明する際にも説得力が出ます。

コストがかかるからこそ、小さく段階的に始めるのが重要

編集部:3つの視点を元に自社の小さな課題を発見していくのが大事ですね。重要性は分かりましたが、一方でDXにはコストがかかる、という懸念の声もよくうかがいます

: もちろん、デジタルのソリューションはどんなものを導入・構築するにせコストは発生します。

ですが3つのポイントの中でもあったように、ミスやトラブルリスクによる利益減や、属人化による非効率性や案件獲得チャンスの喪失などを鑑みて、どの程度のコストであればペイ出来るか、ということを長期的視点で考えることが大切です。

また3つ目のリスクを減らすの際にお話ししたように、結果としてDXに取り組んだことで信頼性が上がり、ビジネスチャンスが広がるということも考えられます。それらも考慮して、費用ではなく将来に向けた投資としても、どこまで許容できるのか、と考えることが重要です。

もちろん、DXが進むことで効率化されたり従業員の安心感が増すことで、退職率の低下や採用活動の効率化にも繋がるというメリットもあるでしょう。

写真:リコージャパン・PP事業部の関 克資氏

「各社の課題に合わせてどう小さく始めるか、ぜひ一緒に考えたいです」

とはいえ、いきなり大きな投資は難しい、というお悩みは当然あると思いますので、だからこそ「小さく始めるDX」を私たちは推奨しています。全ての課題を一気に解決しようとするのではなく、まずは1つ、次にもう1つ、と段階的にDXを進めていくビジョンを特に経営者の方が持つことが大事と感じています。

編集部:最後にDXでお悩みの印刷会社様に一言お願いします

:色々と偉そうにお話してしまいましたが、課題を見つけることも、そこに対する改善策を考えることも非常に難しいことと感じています。

だからこそ、自社だけで悩んでいても答えは出にくいと思いますので、我々のようなメーカーにもご相談いただいて、一緒に考えていけると良いなと思っています。我々も頼っていただけるよう、日々様々な印刷会社様のお悩みをうかがい、営業・開発メンバーなど一体となって解決方法を考えていきます。

また、解決できたことがあれば、どんどん発信もしていきたいと思っています。

Print Compassにも「小さなDXアイディア集」という形で、実際に印刷会社様と一緒に課題解決に取り組んだ結果出てきた解決策の一端を掲載させていただいておりますので、ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。

写真:リコージャパン・PP事業部の関 克資氏

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