
補助金を学ぶ
2025/10/22
<寶積先生に聞く!>POD導入に使える2025年補助金 其の3:「申請で注意することって何?」(採択の注意点)編
ノウハウの実践方法をまとめた
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申請の注意点
前回は採択の秘訣として申請書の記載方法について解説しました。しかしながら補助金は、活用する上で制度的に気を付けなければならない点も多くあります。
そこで今回は補助金を申請する際に注意しなければならないポイントについて解説します。
1. 賃上げ要件に気を付けて
2025年補助金の最大の注意点は「賃上げ」です。
多くの補助金で賃上げが補助金申請の前提条件になっています。具体的には、賃上げの最低ラインを各都道府県における最低賃金の年平均成長率とし、それぞれの事業者に「目標値」を作成させる方式になっています。
高い「目標値」を設定した事業者は採択されやすくなる一方、「目標値」は実績確認に使われます。達成していない場合補助金を返金せねばならないため注意が必要なのです。
なお、「①付加価値額が増加しておらず」、かつ「②企業全体として3~5年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合」は達成できなかった場合であっても返還を求めないというルールになっていますが、これは事業者にとって喜ばしい状況ではありません。
各補助金の活用を検討する際には、賃上げ条件の有無、条件があるならば、最低どの程度の賃上げが必要なのか、をまずはチェックしましょう。
2. ものづくり補助金で審査項目が変化した点に気を付けて
昨年実施までのものづくり補助金は長きにわたって「技術・事業化・政策」の3点にて審査をしてきました。これが2025年からは「経営力・事業性・実現可能性・政策」の4点での審査になりました。
このように技術の課題ではなく、事業実施時における課題の解決に審査の視点が変化している点も注意すべき点です。製造方法や提供方法ではなく実施する事業そのものを審査しているという感じでしょうか。
ものづくり補助金における審査項目(政策面除く)
| 経営力 | |
|---|---|
| 項目 | 内容 |
| 経営目標の具体化 | 事業実施により目指す目標を具体化すること |
| 環境分析を踏まえた事業戦略 | SWOT分析したうえでの戦略であり、実施する事業が会社全体に占める当該売上が高い占有率になっていること |
| 事業性 | |
| 項目 | 内容 |
| 付加価値の創出・賃上げの目標設定 | 事業実施による付加価値と賃上げ目標値の設定、実現可能性が高い計画であること |
| 事業課題の明確化 | 事業の課題の明確化と適切な解決方法を示すこと |
| 市場動向の分析 | 新製品・サービスの市場規模・動向の分析、当該市場の成長性見込 |
| 提供価値と顧客ターゲット・ニーズの調査 | 新製品・サービスが提供する価値、顧客ターゲット(属性・商圏等)、ニーズ調査の実施 |
| 差別化・優位性 | 新製品・サービスと競合他社との比較優位性、差別化の分析 |
| 実現可能性 | |
| 項目 | 内容 |
| 事業実施に必要な技術力の具備 | 事業実施に必要な技術力を有しているか、また当該技術力は他社と比較して優位か |
| 体制構築と資金調達 | 事業実施に必要な社内外の体制、資金調達の見込み |
| 事業化までの工程・課題解決方法 | 事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が妥当か |
| 売上規模 | 補助金交付額等に比べた収益規模など費用対効果が高いか。経費との整合性 |
経営力における「売上高の占有率」や、事業性における「成長性見込み」、実現可能性における「売上規模」など表現があいまいで判断が難しい項目もあります。これらは絶対的な指標があるとは思えませんが、あまりに低い数値では評価されないようです。
あくまでも参考ですが、事業再構築補助金の際には新規事業の占有率は10%以上となっていたので「売上高の占有率」は同程度以上ではないかと思います。成長性の見込みは印刷業で大きく成長させる画は書きにくいかもしれませんが、シェアアップなどで成長が見込める点を主張するなどは一つの方法かもしれません。
最後の「売上規模」については事業期間5年以内で投資回収ができるなどが目安になるのではないでしょうか。
3. 類似案件に気を付けて
これは一昨年くらいから厳格化されていましたが本格的にAIなどを活用した審査を行う事で確認範囲が広まっている感じを受けています。
具体的には、①申請者自身の類似(過去案件との類似)、②他社申請との類似が挙げられます。どのように判定しているか不明ですが、図版や文章展開などでよく似たものを抽出しているのではないかと思います。
恐ろしいのが類似と判定された場合、初回では該当回で不採択になるだけでなく、罰則として次回申請ができなくなります。2回目以降の指摘になると4回申請できなくなるなど重大な事態になってしまいます。
特に類似した設備の場合に対策を講じる必要があります。似た設備でも使い方やオプションの違いを打ち出すことや、活用のフロー図やビジネスイメージの図版は一般的なものを使わずに、自社の具体的な運用に合わせてオリジナルで作成するなどの対策は必要と考えます。
4. 金融機関確認書(計画書作成納期)に気を付けて
資金調達を行う際に借入を活用する際は借入予定の金融機関から確認書を入手する必要があります。この確認書については、金融機関が発行するまでの時間を考えて事業計画を完成させる必要があります。計画書の作成納期に注意する必要があります。
金融機関によっては1週間から10日程度前に計画書を提出してほしい、などと言われることもありますので、ギリギリのタイミングで提出すると申請が間に合わない、というリスクがあります。
しっかりと計画準備することは大事ですが、ある程度余裕をもって進めることも気を付けていきましょう。
5. 代理申請に気を付けて
補助金の電子申請はjGrantsから入力することになりますが、申請にあたってはログインに使われるGbizIDの貸し出しを禁じるルールとなっています。
これは具体的には、支援者を含む社外の第三者が事業者のGbizIDを聞き出して代わりに入力を行うといった行為すら禁じていることになります。第三者が関与したことが判明した場合、最悪不採択となってしまいます。この点も注意する必要があります。申請は事業者自身が入力を含めて行うようにしましょう。
6. まとめ
いかがでしたか?
今回は補助金を申請する際に注意することについてまとめてみました。せっかく申請しても賃上げ未達成で返還になることや、審査項目が変更になっていること、記載内容の類似、金融機関からの確認書の入手、自分自身で入力する必要があるなど過去に申請を経験した方ほどウンザリしてしまうかもしれません。
しかし今後これらが緩和されることは期待薄です。ルールをしっかりと把握して万全の申請を目指すべきと考えます。
具体的な申請の際の注意点や適切な申請方法などリコージャパンでは個別相談会によって会社様の実態に合わせた提案を実施しています。
是非お気軽にお問い合わせください。
- ※ただし無料の個別相談会はPOD機などのリコー製品を活用いただく場合に限りますので、ご注意ください。
本コラム筆者

株式会社GIMS 中小企業診断士
印刷業界専門コンサルタント
寶積 昌彦 氏
立命館大学卒業後、ハマダ印刷機械株式会社入社。
各種印刷機、CTP等関連機器等多岐にわたる機械の営業担当を経て、営業管理・推進業務を担当。市場調査や製品開発企画とプロモーション、仕入商品・部材の調達管理や販売・製造台数の予測などの業務に従事。
その後、グラビア印刷会社の朋和産業株式会社に入社し、大手コンビニエンスチェーン、大手カフェチェーンの軟包材の営業を担当後、中小企業診断士として独立。独立後は公的機関の委嘱による中小企業支援を行う傍ら、印刷業界専門のコンサルティングを行う株式会社GIMSにも参画し印刷・製本会社の経営支援に従事している。






