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2023/02/16
<海外発信コラム・第1回>デジタル時代のカギになる印刷物マーケティングとは
消費者が様々な情報源・ツール・デバイスから情報を入手できる昨今のマルチチャネルの世界では、消費者へのマーケティングはかつてないほど複雑になっています。
デジタル技術が登場する以前から、コミュニケーションには様々なチャネル・手法が存在しました。しかし現在では、印刷物のような伝統的なマーケティングコミュニケーションは、今までの競争相手だけではなく、Eメール、テキストメッセージ、モバイルアプリ、ソーシャルメディアなどのデジタルコミュニケーションチャネルとも戦わなければならないのです。
消費者の嗜好が進化し続ける中で、印刷物によるマーケティングも進化しなければなりません。
印刷物は依然としてコミュニケーションの重要な要素ですが、拡大し続ける様々なチャネルとの間でそのポジションを争っています。本コラムでは、プリントサービスプロバイダー(印刷会社・印刷サービスを提供する事業者)が、デジタル化が進む世界で印刷の力をどのように活用できるかを探ります。
※本コラムはリコー海外支局によるRICOH BUSINESS BOOSTERサイト「Intelligent Print Marketing in The Digital Era」の翻訳転載です。
ノウハウの実践方法をまとめた
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1. 変革の風
他のマーケティングチャネルと同様に、印刷物も消費者の嗜好の変化と無縁ではありません。1990年代前半は、「ジャンクメール」全盛の時代で、あまりにも無関係なものや不必要なものが多かったので、多くの消費者が印刷されたダイレクトメールをゴミ箱に捨てていました。また、デジタル化が進み、これらの通信をすべて電子的に見ることができるようになると、請求書や明細書などのダイレクトメールも激減しました。デジタルコミュニケーションは、時代とともにますます普及し、印刷物より活用されるまで時間はかかりませんでした。
しかし現在、Eメールのスパムメールの方が印刷物のジャンクメールよりもはるかに多くなっているのは皆様もご存じのとおりです。一方で従来のダイレクトメールの方がより多種多様なアプローチが出来る手法である、と見直されてきています。ダイレクトメールは、触覚、視覚、嗅覚など、さまざまな感覚に訴えることができるコミュニケーション手段でもあります。
これは、次のような統計からも読み解くことができます。
- DMA(Data & Marketing Association)のレポートによると、ダイレクトメールの開封率は最大90%であるのに対し、Eメールはわずか20~30%にとどまっています。
- Canada Postのデータによると、ダイレクトメールはEメールに比べ、消費者が内容(情報)を認識するために必要な労力が21%少ないとされています。
- Marketing Profsの統計によると、ダイレクトメールの消費者の4分の3はダイレクトメールを見た後にブランドを思い出すことができるそうです。一方、デジタル広告を見た後に同様のことができるのは、わずか44%の結果となっています。
2. 消費者が求めるものを提供する
多くの消費者がデジタルコミュニケーションに疲れを感じているため、印刷されたダイレクトメールは逆に新鮮で信頼できるマーケティングツールであると言えます。
実際、Keypoint Intelligenceのマーケティングコミュニケーションの調査では、デジタルマーケティングコミュニケーションではなく印刷されたダイレクトメールを読む理由を具体的に尋ねたところ、約20%が「印刷されたダイレクトメールを見て保存するため」と回答しています。また、約15%が、印刷されたコミュニケーションを送る企業に対して、より真剣に自社のビジネス拡大や維持に取り組んでくれると考えています。さらに、18歳から24歳の若い消費者に絞ると、31%がこのように感じるようで、この傾向が特に強いことは興味深いことです。
※N=454 紙ダイレクトメールとデジタルマーケティングメッセージを読む可能性が同じくらい高い消費者
Source: Annual State of Marketing Communications Consumer Survey; Keypoint Intelligence 2020
しかし、様々なチャネルがある現在の世界では、コミュニケーション・チャネルの信頼性は、考慮すべき事柄の一部にすぎません。最終的に経験豊富な企業であれば、それぞれの企業が適しているチャネルでコミュニケーションできるよう準備する必要があります。世の中にはたくさんのコミュニケーションの選択肢があり、ユーザーの好みは人それぞれです。
Keypoint Intelligence社の調査によると、消費者回答者の約4分の3は、自分が利用するチャネルでコミュニケーションをしたいと考えています。さらに、同じ回答者の60%近くが、自分が選んだチャネルでメッセージに応答してくれることを望んでいます。
3. 消費者のいる場所に届くマーケティングアプローチ
印刷物によるコミュニケーションが注目を集めていることは間違いありませんが、印刷会社のクライアント企業のマーケティング担当者は単一のチャネルだけに集中して成功を期待することはできません。ビジネス環境はかつてないほど複雑化しており、マーケティング担当者は多くの重要な課題に直面しています。
- 顧客や見込み客はかつてないほど忙しく、新しいアイデアや提案を共有するために連絡しても、必ずしも営業電話に応答したり、留守電に返信してくれたりするとは限りません。
- 新型コロナウイルスの影響で、多くの企業の方が以前よりも在宅勤務に時間を割くようになっていますが、その結果、対面でのオフィス訪問が生産的である保証はありません。
- たとえロイヤルカスタマーであっても、あなたの会社の商品・サービスをすべて覚えているとは限らないので、定期的なリマインダーがなければ、顧客は過去に同じサービスを受けたことを思い出せず、競合他社に注文してしまうかもしれません。
- 多くのクライアント企業は、印刷会社をイノベーター(革新的なアイディアを持つ企業)として見ていないため、収益拡大を促進するような新しい重要なプロジェクトについて、必ずしも意見を求めることはありません。
印刷物であろうとデジタルであろうと、マーケティングコミュニケーションを通じて顧客に価値をもたらすものでなければなりませんし、顧客は、あなたが想定した場所にいないかもしれません。従って、顧客が存在する場所に到達し、顧客の条件に合わせてコミュニケーションすることがマーケティング担当者の仕事となります。
マーケティングコミュニケーションが複雑化される中でも、ダイレクトメールはまだ有効です。デジタル時代に設立された企業も、起業したばかりの企業も、あらゆるタイプの企業がマーケティング活動にダイレクトメールを利用しています。それは、ダイレクトメールが高いレスポンス率を実現し、送り手の存在を際立たせることができることをマーケティング担当者が理解しているからです。
4. 印刷の価値提案
ビジネスに不可欠なコミュニケーションは、乱雑な電子メールに埋もれてしまうことがありますが、印刷物は、乱雑でないチャネルであるだけに、その役目を際立たせることができます。印刷物は依然として必要なマーケティングチャネルであり、オフラインでの体験ができるため、デジタル疲労の時代にはむしろ好ましいかもしれません。印刷されたコミュニケーションは、手触りが良いだけでなく、記憶に残りやすく、感情的で、共有しやすく、明確な行動喚起を促すことができるのです。
マーケティング担当者は、印刷物によるコミュニケーションを戦略的に展開する必要があります。例えば、顧客について収集したデータは、エンゲージメントの創出、ロイヤルティの向上、財布内シェア(Share of wallet)の改善に活用されるため、データを分析し理解する必要があります。
Keypoint Intelligenceのマーケティング・コミュニケーション・リサーチの回答者に、ダイレクトメールを読んだりレビューしたりするきっかけとなった要因を挙げてもらったところ、「パーソナライズされた適切なコンテンツの配信」や「親しみやすく信頼できる送り手である」という回答が上位を占めました。これは、顧客とのつながりを築き上げ、個人レベルで顧客と理解し合うことの重要性を物語っています。
※N=1,472: 米国とカナダの消費者で印刷されたダイレクトメールを捨てる前に、閲覧している方を対象。
Source: Annual State of Marketing Communications Consumer Survey; Keypoint Intelligence 2020
多くの消費者は、世界的なパンデミック、経済の不確実性、労働力の変化がもたらす長期的な影響について考え、依然として油断できない状態です。消費者は共感や、個々としてのつながりを求めています。
印刷でのコミュニケーションは、顧客との感情的なつながりや信頼を築き、顧客に注目されるための素晴らしい方法となります。印刷物だけが唯一のコミュニケーション手段というわけではありませんが、印刷物は消費者と個人的なレベルで関わることができる、もう一歩踏み込んだ深みを与えてくれるのです。
5. 最後に
消費者は、信頼できるブランドと関わりたいと考えているため、消費者との関係を築くことがかつてないほど重要になっています。
印刷されたコミュニケーションは、特にパーソナライズされたものであれば、顧客との関係を構築するための感動的な方法となります。プライバシーやデータのセキュリティに関する懸念はありますが、消費者が最終的にパーソナライズを望み、それを期待されるようになったことは良い傾向です。
結局のところ、パーソナライズされた関連性の高いコンテンツは、消費者がダイレクトメールを見直すきっかけとなる最大の要因なのです。