売上アップを目指す
2024/04/15
市場&実践データから探る、いま顧客が求めるDMビジネス Part.2 ~市場動向とリコーの実践から見た、これからのDM~
DM市場は今後どうなっていくのか、DMビジネスって儲かるのか、今後どんなDMをクライアントに提案していけばいいのか、DMビジネスに関わる方ならとても気になるところではないでしょうか?
今回のコラムでは、日本の広告費から見えてきたDM市場についておさらいしていくと共に、リコージャパンが行ったDM施策の成功と失敗を通じて得られた知見などから、今後のDMビジネスについて皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
ノウハウの実践方法をまとめた
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1. 日本の広告市場について
まずは、日本の広告費全体から見ていきましょう。 2023年の総広告費は7兆3,167億円、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い、催事の増加や観光・旅行が活性化したことなどから前年比103%の伸びとなり、前年に引続き過去最高を更新しました。これは、2023年度3兆3330億円(前年比107.8%)と大きな伸びを示し、構成比45.5%に達したインターネット広告が広告費全体の成長を後押ししたのが大きな要因といえるでしょう。(2024年2月27日、株式会社電通「2023年 日本の広告費」より)
日本の広告費推移(億円)
出典:Web担ニュース(https://webtan.impress.co.jp/n/2024/03/01/46610)
媒体別広告費<2021年~2023年>
出典:Web担ニュース|媒体別広告費<2021年~2023年>
(https://webtan.impress.co.jp/n/2024/03/01/46610)
2. DMの広告市場について(電通:日本の広告費より)
2023年のDM広告費は3,103億円、コロナ禍でも回復基調にあった2021年と比較すると前年に続き前年比98.1%と微減となりました。
微減の要因としては、コロナ禍の落ち着きに伴い、個人用の在宅向けやBtoB営業目的のオフィス向けDMなどの広告需要がひと段落したことがあげられます。
逆に外出自粛の緩和に伴って、交通・レジャー関連(観光・旅行など)が増加傾向に。また、通信販売や金融・保険分野なども増加しました。
前年に引き続きデータマーケティングを活用したパーソナライズDMやデジタル施策と連動したDMが多くみられ、無宛名便DMも、インターネット広告など他メディアでカバーしきれない層へのアプローチ手段として活用が進みました。また店舗集客と通販促進を兼ねたオムニチャネル告知なども出てきており、全戸配布の要望は引き続き増加しています。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、DM広告費の範囲は「ダイレクトメールに費やされた郵便料・配達料」の合計で、この金額には他の広告費に含まれている関連制作費やデータ取り扱い費用などは含まれていません。
ただ、2018年からは広告市場には含まれないものの、DM広告制作関連市場も掲載されるようになったため、かなり大まかではありますが、この2つの数字を合算すれば、実際のDM広告費に近い数値は把握できるかもしれません。
ちなみに、2023年のDMの総広告費は、DM制作関連市場と合わせると4,484億円となっています。
過去5年間のDM広告費(郵送料金のみ)の推移を見ると、コロナ禍の影響が大きかった2020年を除き微減が続いていますが、企画・制作関連費用やデータ処理運用費で算出されているDM広告制作関連市場は、初めて算出された2018年以降は微減続きだったものの、2023年は1,381億円と、前年比125.2%と増加しています。
※電通:日本の広告費2023年のデータをもとにリコージャパンが作成
DMの通数は減っているものの、制作にかける金額は増えていることがグラフからも見て取れます。
DM広告費が微減、DM広告制作関連市場が微増という結果の要因
- ①人件費、資材や原材料費、輸送費、燃料費の高騰等、物価高騰など経済の変化により、DMのように紙媒体を使用し、個人へ配達、配送するオフラインメディアには今まで以上の戦略性が求められるようになってきているため
- ②今までは施策としてDMを活用していなかったものの、新たなマーケティング施策としてDMに取り組み始めた企業や、今までDMを活用していた企業でも更に効果を高めるために新しいクリエィティブ設計・制作を含めて施策を一新した企業が増加したため
今後は郵便料金の値上げや用紙値上げなどの制作費高騰、配布コストの増大などが市場に影響を与え、DMの通数は間違いなく減っていくでしょう。そんな中で、どんなDMが生き残っていくのか、クライアントが求めるDMとはどんなDMなのかがカギとなりそうです。
リコージャパンが実施した印刷物を発注するクライアント500人に聞いたアンケート結果からも、紙の販促物に求めるものは販促効果。販促効果が高いならば、コストがアップしても検討したいと回答したクライアントが74%を占めました。
アンケート結果からも見て取れるように、DM広告費を見ると広告市場としては微減ですが、DM広告制作関連市場を含めるとまだまだ広告としては有望なメディアと考えても良いのではないでしょうか。
DMは直接顧客に情報を届けることができる、メルマガやWeb広告ではリーチできないターゲット層にアプローチできるなどの特徴があり、現在でも多くの企業が取り入れている宣伝方法といえます。実際にリコージャパンでも多くのDM施策を実施してきました。
次は、リコージャパンが実施したDM施策についてご紹介したいと思います。
3. リコージャパンがやってみた!DMの成功と失敗事例Part2
リコージャパンがDM施策に取り組む理由は、大きく3つ。
- 営業マンが足で稼ぐのではなく、効率よくイベントやセミナーの集客を行いたい
- Web広告やメルマガなどデジタル施策だけでは情報が届かないお客様にもアプローチしたい(Web広告やメルマガの反応率が低くなってきている)
- 紙DMは直接顧客の手元に届き、メルマガより反応が良い
(閲覧率、顧客アクション率が高い、DM効果は長く続く)
リコージャパンがDM施策に取り組む理由を一言でいうと、効率よく販売活動を行いたいためです。
そのために、2022年から2023年にかけて、10件のDM施策を実施しました。
4. 施策結果を大公開!
さて、結果はどうだったのでしょうか?
その前に、DM施策は何をもって成功と言えるのか、成功の定義についてお伝えします。
DMには反応率という指標があります。反応率とはDMを送付した人のうち、「店舗に来店した」「ECサイトで購入した」「セミナーに申込んだ」「問い合わせをした」といった何らかの反応(レスポンス)をした人の割合のことです。
DMの反応率(%)= レスポンスの件数 ÷ DMの発送数 × 100
新規顧客をターゲットにしたダイレクトメール(DM)の反応率はおよそ1.0%で成功と言われています。ただし、DMを送る相手によっても反応率は大きく変わってきます。ターゲット別の反応率の目安は次の通りです。
- 新規顧客の場合0.5~1%程度
- 見込み顧客の場合1~10%程度
- 既存顧客の場合5~15%以上
【出典】日本政策金融公庫「経営Q&A 売り上げアップにつながるチラシ・DM作成術」
上の定義で行くと、リコージャパンの2022~2023年度のDM施策のうち、大成功が6件ありました。
逆に失敗は3件。
最も反応の良かったDMは12.3%、最も反応の悪かったDMは0.0%。お客様に全く反応いただけなかったDM施策もあったのです。この違いは一体何が起因しているのでしょう。次の章では、大成功と大失敗の事例を具体的に検証してみたいと思います。
5. 成功と失敗の違いはいったい何?成功例と失敗例を詳しく解説!
リコージャパンの主なDM施策はセミナーやウェビナー、イベントへの集客が主な目的です。
その中で、ほぼ同じイベントの内容もしくはほぼ同じクリエイティブなのに、成功と失敗に分かれた事例が2つありました。今回はその2つの事例をご紹介します。
一つ目の事例は、DM関連事業者をターゲットにしたウェビナー集客DMの事例です。
どちらもターゲットは同じ、クリエイティブもA4両面と同じ仕様でした。しかし、結果は成功したDMがレスポンス率4.3%だったのに対し、失敗したDMはレスポンス率0.0%とお客様に全く反応いただけない結果となりました。
この違いは何だったのか?
答えはターゲットです。
成功したDMのターゲットリストを精査したところ、集客したいお客様がきちんとターゲットリストに入っていました。一方、失敗したDMのターゲットリストを見たところ、本来集客したいお客様がターゲットに入っていなかったのです。
狙い通りのリストを準備できたかどうか、成功と失敗の分かれ目はそこにありました。
DM成功の法則に5:2:2:1の法則があります。この法則では、DM施策を成功させる要因として、ターゲットが50%、オファーとタイミングが20%、クリエイティブが10%の割合で起因すると言われています。
一つ目の事例では、ターゲットがいかに重要かということを再認識する結果となりました。
続いて2つ目の事例をご紹介します。
こちらは、封書のDM事例です。イベントの内容自体は異なりましたが、クリエイティブで言えば、ほぼ同じ仕様。成功したDMも失敗したDMも角6カマス封筒に招待状やチラシ、社内で回覧いただくためのチケットを同梱しました。
成功したDMは申込サイトへのアクセス率が12.5%だったのに対し、失敗したDMはサイトアクセス率が4.6%と約3分の1という結果に。そして、イベント申込件数を指標としたレスポンス率でも成功したDMが5.6%だったのに対し、失敗したDMは1.2%と苦戦しました。
では、この両者の違いは何だったのか?
まずは封筒です。
片やゴールド、片や白。成功したDMの封筒は高級感があるゴールドだったのに対し、失敗したDMの封筒は一般的な白色。受け取った方の気持ちになって考えれば、ゴールドのDMは捨てにくく、開けてみようという気持ちになるのではないでしょうか?
たかが封筒ですが、されど封筒!お客様の第一印象を決めるのは封筒です。いかに特別感を演出し、興味を持ってもらい、開封してもらえるか、封筒にかかっているといっても過言ではありません。今回の2つの施策では、それぞれの封筒が開封率やそのあとにつながるサイトアクセス率などに大きな影響を及ぼしたものと考えられます。
ただし、公的文書や請求書などの場合は白色の封筒を、VIPユーザーやロイヤルカスタマー向けに封書型DMを送る場合は、特別感を感じていただける封筒をというように使い分けるのが良いかもしれません。
次にターゲットです。
成功したDMは、展示会やイベントなど何かしらリコーと接点を持ってくださったお客様をターゲットに設定し、失敗したDMは全く接点のない新規のお客様が対象だったという大きな違いがありました。
前述の通り、DM施策成功の基準となる反応率はターゲットによってかなり違ってきます。
新規顧客をターゲットにしたDM施策がいかにハードルが高いかを痛感した結果となりました。
6. 成功したDM施策:3事例をご紹介
ここで、成功したDM施策の中から3事例をご紹介したいと思います。
まず、一つ目の事例です。
こちらは、サイボウズ株式会社との協賛セミナー集客を狙ったDMです。ターゲットは最も難しいとされる新規顧客。しかも経営者層をターゲットとしたDMでした。ただし、やみくもにターゲットリストを作成したわけではなく、企業情報データベースから未取引企業の代表取締役をターゲットとして抽出し、ノートパソコン型のDMを送付しました。
クリエイティブの狙いは「何だ、このDMは!?」と驚いてもらうこと。捨てにくく、思わず開封してしまうギミックを活用し、まるで本物のノートPCが届いたかのようなDMに仕立てました。
送付のタイミングはセミナー開催の1か月半前。そして、DM到着時に合わせ、IPアドレスで企業を特定し、Web広告を配信するオフィスターゲティング広告も開始。それだけでなく、営業による訪問やテレコールも実施し、紙×デジタル×リアル施策を展開したのです。
その結果、なんとレスポンス率12.3%。セミナーに参加いただいたお客様からの案件創出金額は約1,800万円。最も難しいといわれる新規顧客宛のDMで成功したPointは、ターゲットの明確化とギミックを活用した“捨てられない”クリエイティブ。そして紙とデジタルのクロスメディア戦略が効果を発揮した結果だといえるでしょう。
2つ目の成功事例も、やはりセミナーの集客DM。
こちらはターゲットを直前の展示会でリコーブースにご来場くださったお客様とし、すべてBtoB企業だったため、社内拡散を狙ったチケットを同梱し、ゴールドの封筒に入れて送りました。同梱したチケットがどれくらい社内で拡散されるのかも検証したのです。
1,225通送付したDM内のチケットのQRコードからサイトへのアクセス解析をしたところ、DMを受け取った方のアクセスが92件だったのにもかかわらず、アクセスしてくださったユーザーの総数は153人にまで増えていたことがわかりました。DMに同梱した5枚のチケットが威力を発揮したのです。チケットを同梱していなければ、QRコード読取率は7.5%だったところが、同梱したチケットは社内で拡散され、12.5%にまで跳ね上がったのです。
そして、最終申込(全体):164名のうち、DMからの申込が68名と、全体の41.5%がDMからの申込みという結果となりました。
こちらのDMの成功のポイントは、ゴールドの封筒を用い特別感を演出したこと(開封率UP)、社内拡散を狙って同梱したチケットが狙い通りの効果を発揮したこと(アクセス率ならびに申込率UP)の大きく2点です。
3つ目の成功事例も、枚葉インクジェットをご紹介するウェビナー集客のためのDMです。
こちらのDMは、高級感のある封筒と特色トナーで特別感を演出したDM。高級感のある封筒を使うと、どれくらい開封率が上がるのか効果検証してみました。
結果はサイトアクセス率が10.5%、ウェビナー申込率も7.4%と高い結果になりました。
このDMの成功のポイントは2つ。
まずは、高級感のある濃紺の封筒を使用しただけでなく、ゴールドやシルバーの特色トナーで印刷し特別感を演出できたこと(開封率UP)。
次にターゲットを展示会で新商品(枚葉インクジェットプリンター)に興味ありと回答いただいたお客様に絞ったこと。
3つの事例に共通しているのは、ターゲットの明確化(絞り込み)と捨てられない(=開封してもらえる)クリエイティブ。
DM施策成功の法則では、クリエイティブの影響度は10%ではありますが、3つの成功したDMの事例を見ると、やはりクリエイティブも重要だということがわかりました。いかにお客様の興味関心を引き、開封してもらえるか、クリエイティブで特別感を演出することがターゲットの設定と併せて、成功の秘訣だと思います。
7. 最後に
郵便料金の値上げにより、DM自体の通数は減るでしょう。
では、今後はどんなDMが求められるのか?
ターゲットを絞り、ターゲットに響く(ターゲットがアクションを起こす)クリエイティブに工夫を凝らした効果的なDMではないでしょうか。
たとえ1通のコストが上がっても、クライアントからは費用対効果の高いDMが求められていくことでしょう。
今後クライアントが求めるDMとして、VIPユーザーやロイヤルカスタマー、どうしても情報を届けたい特別なお客様へ、お客様の感性に響く特別感を演出したより効果的なDMを提案してみてはいかがでしょうか?
具体的には下記のような提案です。
- 封筒は白ではなく、濃い色やゴールドなど高級感のあるもので開封率UPを!
- ゴールドやシルバー、ホワイトなどの特色トナーを効果的に使ってさらに特別感を!
- 厚紙を利用したパッケージ型DMも提案の一つに!
- 紙DM×デジタルの組み合わせでより効果をUP!
これらを実現するPOD機があります。
2023年秋に発売したRICOH Pro C7500です。
RICOH Pro C7500は、様々な封筒に印刷でき、しかもゴールドやシルバー、ホワイトといった特色トナーが使えます。さらにパッケージなども印刷できる厚紙にも対応しています。
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